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Inside Moovment: トラック制作の裏側、全部公開(その1)


Moovmentの曲をひとつ例にとって、中で実際何が行われているのか解説します。クリエイターの皆様の制作のヒントになればと思います。リスナーの皆様はどうやって我々が曲を作っているのか、何となくイメージをつかんでもらえればと。(とはいうものの、僕の曲の作り方はわりと特殊といえば特殊かもしれません)

例に上げるのはこの曲です。

疾走感のあるピアノフレーズが特徴のハウス系トラック。

さっそく行きましょう。まずはピアノです。EAST WESTのピアノ音源です。QL Pianos Goldのベーゼンドルファーのやつ。軽めでかつ硬質の音が出ます。NI Kontaktのベーゼンドルファーもよく使いますが、あれはもっと重い響き。

僕はこんなにキーボード弾けません。僕が押さえたのはまずはコードだけで、アルペジエイターに通すことでフレーズの原型をつくります。滑らかに流れるようなフレーズになるように、アルペジエイターの設定をいろいろ調整。さらにベロシティに少しランダム要素を加えます。曲の展開に合わせ、重ねる音の数をいろいろと変えています。

さらに、一度MIDIトラックをレコーディングし、フレーズに手を加えます。全部手で修正を行っているので、このピアノはまったく同じ繰り返しに聞こえて実は同じではないという、微妙なこだわりがあります。リリースされたら一度じっくり聞いてみてください。

オーディオレベルでは深めにコンプレッサーをかけ、さらにサチュレーターで音を少し歪ませています。ちなみに僕は何にでもサチュレーターをかけます。その後はダンストラックでは定番の処理ですが、イコライザーで200Hz以下をばっさりカットします。こうするとキックやベースとぶつからずにすみます。

次もピアノです。僕がやたらとよく使う逆再生音になっています。

逆再生にする前はこんな感じ。

逆再生にした後のイメージで一度MIDIのフレーズをつくります。そのフレーズを逆転し、実際にピアノの音でレコーディングしてWAVにします。この段階でコンプレッサー・イコライザーや空間系エフェクトをかけておきます。(つまり逆転リバーブになります)

で、そのWAVを再逆転するわけですが、タイミングの調整が難しいのでしっくりくるまで何度もレコーディングをやり直すことに。そのままだと周りから少し浮いてしまうので、全トラック共用のリバーブ&ディレイを少し掛けます。

さらに次もピアノです。パッドサウンドになっています。

上2つのピアノとは違うピアノを使っていますが、何かは忘れました。ここにAbletonのエレクトリック・ピアノ音源、その名も「Electric」を重ねます。Auto PanをSpinモードにしてロータリースピーカー風のゆらぎを出します。

さらにreFX Vanguardでつくったエレクトリック・ピアノ風のパッドを重ねています。32bitプラグインなのでJBridgeで動かしています。操作パネルやエンベロープの動作が不安定なので、32bit版のAbleton Liveでプリセットを作り、64bit版でそれを読み込むという面倒くさい手順をとっています。中身はデチューンした矩形波をフィルターで抑えた音です。

3つの音をコンプレッサーとイコライザーで整え、2種類の和音を一度レコーディングします。それを適当にカットして順再生のままの音と逆再生した音を交互に重ねます。順再生の音は左側に、逆再生の音は右側に置くと、右回りに音がぐるぐる回るような不思議な効果が出ます。the Chemical BrothersのPioneer Skiesという曲のエンディングで使われているトリックの真似です。この曲の入ったCome With Usと前作のSurrenderは過去15年ぐらい聞きまくってます。最高のアルバムです。

というわけで、ピアノ関連は終了です。気持ち悪いぐらいのこだわりですが、このレベルまでこだわるのは1曲の中でも数パートです。全部でこういうことをやろうとすると気が狂っちゃうから。

#MOOVMENT #プログレッシブ #Ableton小ネタ

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