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ハーモナイズドミックスのために(DJ)

DJが曲と曲をつなぐとき、しばしば2つの曲が重なり合ってまるで1つの曲のように聞こえることがある。さっきまで聞こえていた曲が少しずつ、あるいは急激に趣を変え、そこに新しい感動が生まれる。曲と曲をつなぐというのはそれ自体ひとつのアートなのだと実感する。このようなミックスにおいて必要となる技術が「ハーモナイズドミックス」だ。

僕自身はたまにしかDJをしないし経験も浅いし、あまり偉そうなことを言うのもあれだが、とにかく僕はずっとこの2つの曲が生み出すケミストリーにこだわってきた。その際、クリエイターとしてわずかながら持ち合わせていた音楽理論的知識が役に立つことになった。(ちなみに僕はどちらかといえば感覚主義)以下は僕のクリエイター的目線での、ハーモナイズドミックスの手順だ。

※PCやUSBでのプレイを前提にしているが、CDやアナログにも応用できる。アナログだとピッチを大きく変えるときキーのずれが大きくなるので注意

僕のミックス。4:30あたりから次の曲への遷移が始まる。

Shingo Nakamura, "Always" → Hosini, "Laomedeia"

まずはコレクションの各トラックにキー情報を書き込んでおく必要がある。ライブラリ管理機能付きのほとんどの音楽プレーヤー(iTunes, rekordbox, MusicBeeなど)で「Key」タグを表示・編集できる。Beatportで買ったデータはあらかじめキー情報が書き込まれているので楽。ときどき間違っているけど。

このとき、書き込むキーの名前を次のようにしておく。キー情報が書き込まれたトラックはまとめてキーの名前を変更する。

例:(Majは無表記のことが多い。minは「m」とだけ書かれていること)

C Maj → 「01C」

C# Maj → 「08C#」

A min →「01mA」

F# min →「04mF#」

以下同様に

メジャー

「01C」「02G」「03D」「04A」「05E」「06B」「07F#」「08C#」「09G#」「10D#」「11A#」「12F」

マイナー

「01mA」「02mE」「03mB」「04mF#」「05mC#」「06mG#」「07mD#」「08mA#」「09mF」「10mC」「11mG」「12mD」

※たまにC#がD♭などのように表記されている場合もある

※AマイナーをAmなどといった形ではなく、逆にmAとしたのは、キー順に並べ替えたときメジャーとマイナーがうまく交互に並ぶから。

キーの判別にはAkiyoshi Kamide氏制作のフリーソフト「MIDI Chord Helper」が圧倒的に便利なので紹介しておく。「jarダウンロード」からダウンロードできる。Javaランタイムが必要なのでインストールしておこう。ナンバーは中央のC/Amから右に順番に01→02→03…となる。なおE#とはF(12F)のこと。FxmはGマイナー(11mG)、CxmはDマイナー(12mD)のこと。

ちなみにMIDI周りの設定を工夫するとDAWへの入力もできる。

選曲の際は次のルールを基本とする。もっともキレイにつながる可能性が高いのは1で、以下少しずつ可能性が下がる(あるいはつなぐときの違和感が増える)

1:同じキー同士

例…01mA→01mAなど

2:同じナンバー同士

例…01mA→01Cなど(平行調)

3:隣のナンバーのメジャー同士またはマイナー同士

例…01C→12F、01mA→02mEなど(属調/下属調)

4:隣のナンバーのメジャーとマイナー

例…01C→02mEなど(属調平行調/下属調平行調)

5:同じルートのメジャーとマイナー

例…01mA→04Aなど(同主調)

さらにキーシフト(トランスポーズ)を行うとき、「+1半音」で番号が7増える(または5減る)。「-1半音」では番号が5増える(または7減る)。

ハーモナイズドミックスがやりやすいのは、イントロ付近とアウトロ付近で同じコードが続いている曲。特に3~5のパターンの場合、コード展開が最後まで続く曲はキレイにつながる可能性がかなり低い。たとえばHosiniの"Laomedeia"はやりやすいが、Deadmau5 & Kaskadeの"I Remember"はやりにくい(前後の曲をかなり選ぶ)。

これらの関係は「五度圏」と呼ばれる図を使うと視覚的にはっきりする。通常Cメジャー・Aマイナー(01C/01mA)を一番上に置くが、この図では時計と同じ配置にしてある。緑の線は上記5番(同主調)を表し、グレーの線はピッチシフト1半音を表している。

上に載せた僕のミックスの場合、「Always」は04mF#(F#マイナー)だがキーシフトで半音上げて11mG(Gマイナー)にしている。4:30辺りからミックスし始める「Laomedeia」は11A#。9:00頃から入る「Heart Way」は11mG(Gマイナー)。11:40あたりからの「Nemesis」は05mC#(C#マイナー)を半音上げて12mDにしている。

ハーモナイズさせても必ずしも滑らかなつながりができるとは限らず、またハーモナイズしていなくても素晴らしいつながりが生まれることもある。最終的にはとにかくあれこれ自分で試して気持ちの良いつながりを見出していくしか無い。ただ、この手法を使えば圧倒的につながりが見つけやすくなるので、ハーモナイズに興味のあるDJ諸氏は試してみてほしい。

#DJミックス

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